【講座:護蹄管理】削蹄師が日本の畜産を救う(1)

削蹄師が日本の畜産を救う!

1.牛の幸せは農家の幸せ!?
削蹄師の皆さんは何のために削蹄をしていますか?自分の生活のため?農家の収入増加のため?牛の幸せのため?
国際獣疫事務局(OIE)が2004年に“動物福祉の原則に関する指針”という宣言を出しました。その宣言を境に、世界的に家畜のアニマルウェルフェア(家畜福祉)は口蹄疫や牛白血病などと同列で扱われるようになりました(日本を除いて)。この中に“家畜が幸せになれば農家も儲かる”という内容の文章があります。牛の快適性・満足性を高めることで、牛が本来持っている能力を自然に&最大限に発揮してもらう、という考え方です。これの対極にあるのが、生産性向上&作業効率化の追求一辺倒で、濃厚飼料や添加剤を多給して生産性を向上させ、ついてこられない(病気になる)牛は淘汰するというアニマルマシーン的考え方です。
その頃から世界的に、馬は個体診療、牛は群管理という流れができてきました。EUなどでは第四胃変位手術の数や速さを競う様な獣医療は時代遅れであり、第四胃変位を発生させるような牛群管理しかできないのかと馬鹿にされるような流れになりつつあります。EUにおける大学教育はすでにそのようになっているようです。削蹄の世界はどうなるのでしょうか?

2.蹄病を責任もって扱う人のいない国!?
蹄底潰瘍は削蹄師が最も頻繁に経験する蹄疾患です。頻繁に見る、つまり病気が当たり前に存在するということは、本当は異常なことです。特に蹄底潰瘍は蹄底角質表面に病巣が露見する数ヶ月前から蹄底角質の内側で炎症とそれに伴う痛みが生じており、アニマルウェルフェア上、非常に問題な状態が継続しています。皆さんは削蹄を行った牛群で蹄底潰瘍が多発していた場合、どのように対応していますか?
蹄病治療に関しては、以前に日本獣医師会と日本装蹄師会の間で、“軟部組織は獣医師、硬部組織(角質)は削蹄師”という申し合わせがあったように思いますが、獣医師で蹄をきちんと診る人は(地域格差が大きいですが)未だ少数派です。
そもそも獣医師は、畜主から依頼のあった牛に関してしか診療を行いません。では、畜主は蹄の異常をどれくらい見つけ、そのうちどれくらいを獣医師に診療依頼するでしょうか?こう考えてくると、獣医師が診ることのできる蹄病は氷山の一角であり、かなり重症化した廃用候補牛主体ということは想像に難くないと思います。それに対して、削蹄師はすべての牛の蹄を診ることができます。言い換えると、削蹄師しか全ての牛の蹄を診ることができません。ではすべての牛の蹄を診ることにどのような意味があるのでしょうか?

(続く)